介護現場でインカム導入を検討する際の注意点
インカムは介護現場の業務効率化や情報共有に大きな効果をもたらしますが、「導入すれば必ずうまくいく」ICTではありません。
導入編では、実際にインカム導入を進める際に必ず押さえておきたい考え方と注意点を整理します。
前回の記事、紹介編はこちらになります。
なんでもインカムを入れればよいわけではない理由
インカム導入を検討し始めると、
- 加算が取れると聞いた
- 他施設が導入している
- 現場が忙しいから何か入れたい
といった理由から、「とにかくインカムを入れよう」という流れになりがちです。
しかし、インカムはあくまで課題解決の手段です。
- 課題が整理されていない
- 使い道が曖昧
- 現場の運用が決まっていない
この状態で導入すると、
「結局使われなくなった」
「一部の職員しか使っていない」
という結果になりやすくなります。
現場が納得しないICTは定着しない
介護ICT導入で最も多い失敗は、現場が納得していないまま導入が進むことです。
- 操作が複雑
- 業務の流れと合っていない
- なぜ使うのか説明されていない
このような状態では、インカムは「面倒なもの」になってしまいます。
インカム導入を成功させるためには、
- なぜ必要なのか
- 何が楽になるのか
- どんな場面で使うのか
を、現場職員と共有することが欠かせません。
導入前に考えるべき基本的な視点
インカム導入前に、最低限整理しておきたい視点は次の3つです。
- どんな課題を解決したいのか
- インカムで解決できる課題なのか
- 他の方法(運用改善など)では難しいのか
これを整理せずに進めると、
「導入したけど効果が分からない」
という状態になってしまいます。
「インカム導入=課題整理から始まる」
この意識がとても重要です。
インカム導入時に留意すべき3つのポイント
インカム導入を成功させるためには、事前準備が何より重要です。
ここでは、導入前に必ず押さえておきたい3つのポイントのうち、まず最初に取り組むべき「課題の整理」について詳しく解説します。
① 施設・現場が抱える課題の整理
インカム導入を検討する際、最初に行うべきことは施設や現場が抱えている課題の明確化です。
よくある介護現場の課題としては、
- 人を探すのに時間がかかる
- 緊急時にすぐ応援を呼べない
- 情報共有が口頭や伝言に頼っている
- 職員間の連携がうまくいっていない
などが挙げられます。
まずは、「何が困っているのか」を現場目線で洗い出しましょう。
課題とインカム導入の目的を明確にする
次に重要なのが、その課題をインカムでどう解決したいのかを明確にすることです。
例えば、
- 人探しを減らしたい
→ 常時つながる音声連絡が目的 - 緊急時の対応を早くしたい
→ 全体への一斉連絡が目的
このように、課題とインカムの役割を結びつけることで、導入後のブレを防ぐことができます。
「なんとなく便利そう」ではなく、目的を言語化することが非常に大切です。
音声入力が必要か、情報共有だけでよいか
インカム導入を検討すると、多くの場合、メーカーやサービス提供業者から「介護記録ソフトとの連携」を提案されます。
しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。
- 本当に音声入力は必要か
- 記録は今の方法で困っていないか
- 情報共有だけで課題は解決しないか
音声入力が必要な場合と情報共有だけで十分な場合では、必要なインカムの機能も、コストも大きく変わります。
すべての施設に高機能なインカムは必要ありません。
必要な機能によって変わるコストと構成
課題が整理されると、自然と必要な機能の範囲も見えてきます。
- 音声通話だけで十分
- 一斉連絡ができればよい
- 記録ソフトと連携したい
機能が増えれば増えるほど、初期費用・月額費用は高くなります。
「必要な機能だけを選ぶ」
これが、インカム導入を無理なく進めるための基本です。
② 導入コスト・維持コストの考え方
インカム導入を検討するうえで、避けて通れないのが「コスト」の問題です。
導入時の費用だけでなく、運用を続けていくための維持コストまで含めて考えることが、後悔しないインカム導入につながります。
初期導入コストとランニングコスト
インカム導入にかかる費用は、大きく分けて次の2つがあります。
- 初期導入コスト
- インカム本体
- スマートフォンや専用端末
- ヘッドセット
- 初期設定費用
- ランニングコスト(維持費)
- 月額利用料
- 通信費
- 保守・サポート費用
導入時の金額だけを見て判断すると、毎月かかる費用を見落としがちになります。
「年間でいくらかかるのか」
という視点で考えることが重要です。
スマホ・通信契約・充電環境の検討
スマホとワイヤレスヘッドセットを使ったインカム運用では、以下の点も検討が必要です。
- SIMフリー端末にするか
- 通信機能を持たせるか
- Wi-Fi環境で運用できるか
これによって、月額の通信コストが大きく変わります。
また、忘れがちなのが充電環境です。
- スマホ用の充電器
- ワイヤレスヘッドセット用の充電器
- 充電場所の確保
例えば、10台導入する場合、最低でも10セット分の充電環境が必要になります。
ヘッドセットの台数・衛生面・入退職時の対応
ヘッドセットについても、コスト面・運用面で考えるべきことがあります。
- 共有するのか
- 一人一台にするのか
- 衛生面の配慮はどうするか
一人一台にすると衛生面では安心ですが、入退職が多い施設ほどコストが増える点には注意が必要です。
また、
- 予備機の確保
- 故障時の交換対応
といった点も、導入前に想定しておくと安心です。
「安ければ良い」わけでも、「高ければ正解」でもありません。
自施設の運用に合ったコスト感をしっかり見極めることが大切です。
③ 実際の業務シーンをイメージする
インカム導入を成功させるかどうかは、「実際に職員が装着して働く姿をどこまで具体的にイメージできているか」にかかっています。
ここでは、業務シーンを想定する際に押さえておきたいポイントを整理します。
職員が装着して働く流れの想定
まずは、職員がインカムを身に付けて業務に入る一連の流れを想像してみましょう。
- 出勤後、どこで機器を受け取るのか
- いつ電源を入れるのか
- 業務開始前に何を操作するのか
- 使い終わった後、どこに戻すのか
この流れが複雑だと、それだけで「面倒」「使いたくない」という印象になります。
理想は、
- 業務前にアプリやシステムを起動
- スマホをポケットに入れる
- インカムのボタンを押して会話
- もう一度押して終了
このくらいシンプルな運用です。
シンプルな操作性の重要性
介護現場では、
- 忙しい
- 両手がふさがる
- 時間に余裕がない
という状況が当たり前です。
そのため、
- アプリを探す
- チャンネルを選ぶ
- 設定を切り替える
といった操作が多いインカムは、定着しにくくなります。
「考えなくても使える」
このレベルまで操作を簡略化できるかが、導入成功のカギになります。
有線・無線ヘッドセットそれぞれの注意点
ヘッドセット選びも重要なポイントです。
有線ヘッドセットの場合
- コードが邪魔になりやすい
- 入居者に引っかかるリスク
- 断線しやすい
無線(ワイヤレス)ヘッドセットの場合
- 充電が必要
- 充電忘れによるトラブル
- 予備機の確保が必要
どちらにもメリット・デメリットがあります。
「安全性を重視するのか」
「運用の手軽さを優先するのか」
現場の動線や働き方に合わせて選ぶことが重要です。
現場職員を巻き込んで考えることの大切さ
ここまでの内容は、管理者や担当者だけで決めるよりも、実際に使う職員を交えて考える方が成功しやすいです。
- 実際に装着してもらう
- 意見を聞く
- 不安点を洗い出す
導入スピードは多少落ちますが、その分、定着率は大きく上がります。
インカム導入を成功させるための進め方
インカム導入では、「どの機器を選ぶか」以上に、「どのように進めるか」が重要です。
ここでは、導入から定着までを見据えた進め方のポイントを整理します。
現場職員を巻き込んだ検討の重要性
インカム導入を管理者や一部の担当者だけで決めてしまうと、現場では「決まったから使う」という空気になりがちです。
そうなると、
- 納得感がない
- 不満が溜まる
- 使われなくなる
といった結果につながります。
検討段階から、
- 現場職員に試してもらう
- 意見を聞く
- 不安点を共有する
といったプロセスを踏むことで、「自分たちで決めたインカム」という意識が生まれます。
導入スピードより「納得感」を優先する
「早く導入したい」という気持ちは自然ですが、インカム導入ではスピードより納得感が重要です。
- 操作が分からないまま本番
- ルールが曖昧なまま運用開始
- トラブル時の対応が決まっていない
こうした状態では、現場にストレスだけが残ってしまいます。
多少時間がかかっても、
- 操作説明
- 使う場面の共有
- ルールのすり合わせ
を行うことで、導入後のトラブルを大きく減らすことができます。
導入後の運用・定着までを見据える
インカム導入は、使い始めてからが本番です。
- 使われているか
- 困っている点はないか
- 運用ルールは合っているか
定期的に確認し、必要に応じて運用を見直すことが大切です。
「現場に合う形に調整し続ける」
この姿勢が、インカム導入を成功へと導きます。
介護現場でのインカム導入に関する質問
インカム導入を検討している介護施設で考えられる質問をまとめました。
導入前の不安や疑問を解消することで、自施設に合った判断がしやすくなります。
小規模施設でもインカムは必要?
小規模施設の場合、
「職員同士が近くにいるから必要ないのでは?」
と感じることも多いと思います。
しかし実際には、
- フロアが分かれている
- 夜勤帯の人数が少ない
- 一人で対応する場面が多い
といった理由から、小規模施設ほどインカムの効果を感じやすいケースもあります。
大規模・小規模に関わらず、「人を探す時間があるかどうか」が判断のポイントです。
ITが苦手な職員でも使いこなせる?
結論から言うと、仕組みや操作がシンプルであれば問題ありません。
ITが苦手な職員がつまずくのは、
- 操作が多い
- 手順が複雑
- トラブル時の対応が分からない
といった点です。
ボタン操作だけで使える、「考えなくても使える」インカムであれば、年齢やITスキルに関係なく定着しやすくなります。
インカムとスマホ、どちらが向いている?
最近は、スマホ+アプリでインカム代わりに使うケースも増えています。
- 専用インカム
- 操作がシンプル
- 業務専用で使いやすい
- スマホ型インカム
- 導入の自由度が高い
- 他システムと連携しやすい
どちらが良いかは、施設の課題・予算・運用体制によって変わります。
重要なのは、「現場が無理なく使えるかどうか」です。
介護現場に合ったインカム導入を一緒に考えましょう
インカムは、介護現場の課題を解決するための有効なICTの一つです。
ただし、効果を最大限に引き出すためには「自施設に合った形」で導入することが欠かせません。
最後に、導入編のまとめとして大切なポイントを整理します。
施設ごとに最適なインカムは異なる
介護施設と一口に言っても、
- 規模
- 人員体制
- 建物構造
- 業務内容
はそれぞれ異なります。
そのため、「これが正解」というインカムは存在しません。
他施設の事例や流行だけで判断するのではなく、自施設の課題や働き方に合ったインカムを選ぶことが重要です。
本当に必要なICTを見極める大切さ
インカム導入を進める中で、つい「多機能なもの」に目が向きがちですが、重要なのは本当に必要な機能かどうかです。
- 音声入力まで必要か
- 情報共有だけで十分か
- 運用をシンプルに保てるか
これらを見極めることで、
- コストを抑え
- 現場の負担を減らし
- 定着しやすい導入
につながります。
導入検討中の方への問い合わせ案内
インカム導入は、「考えることが多くて大変そう」と感じるかもしれません。
実際、私が勤めている施設でもインカム導入を検討している真っ只中であり、メーカーさんなどと紹介や打ち合わせをすると、
- 何から手をつければよいか分からない
- 業者の提案が本当に合っているか不安
- 現場の意見をどうまとめればよいか悩んでいる
という声が介護施設では多いと聞きます。
最近は医療・福祉業界に対してDXを推進するための人材確保を支援するなんてニュースも見られますが、国や都道府県が考えているほど簡単なものではありません。
介護現場でICT導入に携わっている経験から、現場に無理のないインカム導入を一緒に考えるお手伝いができます。
気になることがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。



